2023年11月22日、中川翔子さんのX (旧Twitter)で「本名の改名が認められた」と投稿されたことが話題になりました。
その時「中川薔子として登録したかったのにできず」と切り出していたことで、『薔』が名前に使えないことも話題になりました。
今回は、なぜ『薔』の字が名前に使えないのかの理由や中川翔子さんの本名にまつわる話などを調べてみました。
・『薔』が名前に使えない理由
・名前に使える漢字に制限がある理由
・中川翔子の本名と名前にまつわる話
・名前に使えない漢字10選
ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
【なぜ】薔が名前に使えない?|常用漢字&人名用漢字に含まれないから
自分の子供には思いを込めた名前を付けたいのが親心というものですよね。
ですが、子供の名前(戸籍に登録する名前)に使える漢字は法律で決まっているのをご存じですか?
子供の名づけに使える文字は決められている
子の名前については、常用平易な文字を用いなければならないと戸籍法で決まっています。
使用可能な文字は、以下の5種類です。
- ひらがな
- カタカナ
- 常用漢字
- 人名用漢字
- 符号
名づけに使える漢字は常用漢字と人名用漢字を合わせて、全部で2999字体あります。
符号とは伸ばす音の『ー』、繰り返しを表す『ゝ』、濁点が付いた『ゞ』、実際名前に使うことが多い『々』の4つです。
アルファベットや記号、アラビア数字は認められていません。
ちなみに、戸籍に登録されるのは文字だけで、読み方までは登録されません。
そこで、読み方を決めてから漢字をあてる名付け親が出てきました。
りこ
常用漢字と人名用漢字とは?
名づけには常用平易な文字を用いなければならないと法律で決まっていることは前述したとおりです。
そこで、名づけに使える漢字として常用漢字と人名用漢字が選定されました。
常用漢字とは「法令、公文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」として示された漢字です。
2010年11月30日に「常用漢字表」として告示されたものが定められたものが、2136字体あります。
対して人名用漢字とは、子の名づけに使える漢字のうち、常用漢字に含まれないものを言います。
2017年9月25日に改訂され「戸籍法施行規則別表第2(漢字の表)」として指定された863字体のことです。
名前に使える常用漢字&人名漢字に制限がある理由
先ほど説明した通り、名前に使える漢字は全部で2999字体と制限があります。
それでは、なぜこのように名前に使える漢字を制限するのでしょうか。
それは先ほども述べた通り、戸籍法に定められているからです。
戸籍法第50条:第1項 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
「子の名にはできるだけ常用平易な文字を用いることが理想である。その意味から子の名に用いる漢字は当用漢字によることが望ましい」— 国語審議会 人名漢字に関する建議 昭和26年5月14日
「国民の読み書き能力を向上させ,教育を高めるためには,国語表記法の改善が必要である。その具体的方法として,漢字整理と使用調整とが必要であることも,また動かしがたい方向である。(中略)国語審議会は人名の表記についても,これを念頭において考えるべきであると信ずるものである。(中略)いったい子の名というものは,常用平易な文字を選んでつけることが,その子の将来のためであるということは,社会通念として常識的に了解されることであろう。当用漢字の基準に従うことが,その子の幸福であることを知らなければならない。」— 同・国語審議会 人名漢字に関する声明書 昭和26年5月14日
のちに国民からの要望などを取り入れて、常用漢字と人名用漢字は改訂され、現行の2999字体になりました。
現在は使えない『薔』の字も、いつか改訂されて使えるようになるかもしれません。
薔が名前に使えない事で中川翔子の本名にも影響していた!
※引用:X
日本で一番大きな漢和辞典『大漢和辞典』に収録されている漢字が約5万字余り。
漢字はたくさんあるのに、名前に使えるのは約3000字しかないわけです。
このことから、名づけに関するトラブルが起こることも。
『薔』の字が名前に使えなかったことで起きた、中川翔子さんの本名にまつわる話です。
中川翔子の本名は『しようこ』だった
中川翔子さんの本名は『中川しようこ』でした。
『しょうこ』ではなく『しようこ』だったのです。
なぜこんなことが起きたのでしょうか。
中川翔子さんのご両親が薔薇が好きだったため、当初から娘には『薔子(しょうこ)』と名付けたかったそうです。
ですが、出生時に母子ともに危険な状態となり、しばらく入院の必要があったため、母親の姉が出生届の手続きを代理で行いました。
出生届を提出した時、新生児の名前の欄に伯母(母の姉)が『薔子』と記入しました。
すると、常用漢字にも人名用漢字にも『薔』の字がないことから不受理になります。
そこで役所と伯母が押し問答になってしまったそうです。
最終的には憤慨した伯母がひらがなで『しょうこ』と書き殴って再提出したところ、『ょ』を大きく書いてしまったため、『しようこ』で受理されました。
中川翔子さん本人が本名が『しようこ』であることに気付いたのは2009年頃パスポートの変更手続きの時。
担当者に戸籍名は『しようこ』だと言われて持っていた戸籍謄本を確認したところ『よ』のサイズが大きいことに気が付いたようです。
中川翔子へ改名
クレジットカード、キャッシュカード、パスポートなど、本名で登録する必要があるものの場合、アルファベット表記が『SHOKO』のところが『SHIYOUKO』になること、
領収書の宛名が『中川はうこ』と「し」と「よ」が一緒になってしまうような誤記をされたりと不便が多いため、以前から改名したいと思っていた中川翔子さん。
今まで改名しなかった理由は「『中川しようこ』の画数が最強なので放置していた」とのこと。
結婚して名字が変わったことをきっかけに改名に踏み切った模様です。
法律的には、「正当な事情があって改名したい者は、家庭裁判所から認められたら、それを役所に届け出る必要がある」ということになっています。
戸籍法第107条の2:正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
改名したい理由によっては、家庭裁判所からの許可が下りないこともあります。
りこ
中川『翔子』に決めた理由
中川翔子さんが『薔子』でも『しょうこ』でもなく『翔子』に改名した理由は何でしょうか。
出生時にご両親が望んだ『薔子』は、『薔』の字が今でも常用漢字、人名用漢字ともに該当しないので受理されません。
最終的に『翔子』に決めた理由は、今まで「中川翔子」を育ててくれたファンへの感謝や、結婚後名字が変わったことで画数が良くなることなどだそうです。
『中川翔子』の芸名は、2000年代から長年使っているので、『翔子』に改名するときも家庭裁判所の判断はスムーズだったのではないでしょうか。
薔の他にも名前に使えない漢字10選
『薔』の字以外にも、実は名前に使えない漢字があります。
一部をご紹介します。
漢字 | 意味 |
玻(は) | 玻璃で水晶を表す。 |
睛(ひとみ) | 「瞳」の旧字体。旧字体は原則人名には使えないことが多い。 |
珪(けい) | たまという意味。 |
綵(あや、さい) | 美しい絹織物を指す。 |
薺(なずな、せり) | 花の名前。春の七草のひとつ。生薬にもなる。 |
杞(こ) | 枸杞(くこ)の実のこと。「枸」も人名には使えない。 |
淕(りく) | 雪交じりのみぞれ。 |
棗(なつめ) | 木の実の一種。ナツメヤシ。茶道では抹茶を入れておく容器のこと。 |
冰(ひ) | 「氷」の旧字体。新字体は名前に使える。 |
諳(おん) | そらんじるという意味。 |
いかがでしたか?今回は『薔』の字が名前に使えない理由として常用漢字と人名用漢字についてご紹介しました。
名前に使える漢字が法律で決まっていて、なんでも自由につけられるわけではないことがわかりました。
中川翔子さんの本名が『しようこ』だったのにも驚きましたね。
名前は人生について回る大切なものです。
名前はしっかり調べて慎重に、本人が年を取っても使えるかなども含めて考えてあげたいものですね。