2023年10月7日早朝、パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム武装組織ハマスが、イスラエルに向けて大量のロケット弾を発射。
ハマスの戦闘員がイスラエルに侵入して南部を襲撃したことから始まった衝突は、イスラエルがガザ地区への空爆など報復、パレスチナ人、イスラエル人とも死者が増え続けています。
ガザ地区にはNGO団体が複数派遣されていましたが、状況の悪化を受けて、エジプトのラファ検問所から次々と脱出しています。
国際NGO団体の一つ『国境なき医師団』(MSF)の日本人スタッフ、白根麻衣子さんもエジプトに退避し、オンラインでの記者会見を行ったことで注目を集めました。
今回は白根麻衣子さんの経歴、医師ではない彼女がどうして国境なき医師団の職員として活動しているのかなどを調べてみました。
・白根麻衣子さんの経歴
・大学卒業後MSFで活動するまで
・国境なき医師団とは何か
ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
白根麻衣子のwiki経歴やプロフィールまとめ
まずは、白根麻衣子さんの経歴やプロフィールをまとめてみました。
名前 | 白根麻衣子(しらね まいこ) |
現職 | 国境なき医師団 アドミニストレーター |
経歴 | 3姉妹の次女として生まれる |
大学卒業後日本国内の銀行に個人営業として3年間勤務 | |
退職後教育学に興味を持ちイギリスに留学 日本とイギリスで修士課程修了 |
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帰国後日本のインターナショナルスクールに勤務 | |
2016年 MFS日本事務局で人事・総務担当として勤務 | |
2017年 海外の現場スタッフの採用プロセスに挑戦し選考に通過 アドミニストレーターとして海外現場での活動に参加 ウクライナ、アフガニスタン、パレスチナ・ガザ地区のプロジェクトで活動(2020年12月時点) |
白根家の次女として生まれた麻衣子さん。
白根家は元々母親が国境なき医師団に寄付をしたり、姉や妹は学生のうちから海外の貧困地域でボランティアに積極的に参加していました。
国際協力やボランティアに関心が高い家庭に育った麻衣子さんですが、本人は特に興味もなく、「どうせ海外に行くならリゾートで遊ぶ方がいいのになぁ」と考えていたそうです。
そんな白根麻衣子さんが、なぜ国境なき医師団の海外現場スタッフになったのか?
ターニングポイントはインターナショナルスクールでの経験でした。
インターナショナルスクール勤務がターニングポイントに
大学を卒業後、国内の銀行に入行して個人営業に従事していましたが、教育学に興味を持ち、3年間勤務した銀行を退職してイギリスに留学しました。
修士課程を修了して帰国後、日本のインターナショナルスクールに勤務します。
この学校では、社会的なバックグラウンドには恵まれていないが、可能性がある世界各地の子供たちに日本で教育を受けてもらう奨学金制度があり、白根麻衣子さんは応募してくる子供たちの選考に関わりました。
「例えばインドのカースト外に生まれ、教育を受けられない子や、難民キャンプで育った子、世界50カ国くらいの子たちとオンラインで面接をしました。日本にいては決して見えない世界の現実を初めて身近に感じました。勉強をしたいけど自分たちの環境ではそれが叶わない、そういう子たちが実際に日本に来て勉強をしている姿を見て本当に感動しました。そのうちに、もっと直接的に支援をしたい、もっと何かをしたい、と思うようになっていきました。」
引用元:国境なき医師団
この頃から人道支援や国際協力に関心を持った白根麻衣子さんは、インターネットで「人道支援」「国際協力」のワード検索をするようになりました。
そうすると必ず『国境なき医師団』がヒットします。
医療従事者ではない白根麻衣子さんは最初、『国境なき医師団』という医療援助団体で自分が活動できるとは思っていなかったそうです。
ですが、国境なき医師団日本事務局が出した総務・人事の求人を目にして、非医療従事者でも活動できることを知りました。
「これなら自分の経歴にもつながっている。ここで人道支援を支えることができる」
と思って飛びついたそうです。
このことが国境なき医師団のスタッフとして働くはじめの一歩になりました。
非医療スタッフとして国境なき医師団へ
※引用:X
国境なき医師団日本事務局で人事・総務担当として働き始めた白根麻衣子さん。
連日のように世界中の現場の活動の話を聞き、活動現場で働くスタッフの半数は非医療従事者ということを知ると、現場に行きたい思いが募っていったそうです。
国境なき医師団では、事務局職員の経験があっても海外の現場スタッフとして働くためには別の採用プロセスを踏まなくてはなりません。
白根麻衣子さんは2016年に挑戦して選考を通過しました。
初めて派遣されたのはウクライナ。
アドミニストレーターとして予算案を作ったり日々の金銭管理をしたり、現地スタッフの採用、雇用契約の締結、不動産契約など、人事・総務に関する業務にあたり、経験を積みました。
その後もパレスチナ・ガザ地区やアフガニスタンなどの海外派遣に参加しています。
国境なき医師団とは
※引用:X
改めて国境なき医師団とはどんな団体なのでしょうか。
紛争や自然災害、貧困などにより命の危険に瀕する人々に医療を届ける、民間で非営利の医療・人道援助団体
医療援助を主な目的とした国際NGO団体、と言っていいかと思います。
国境なき医師団について理解するのに重要な5つのキーワードがあります。
- 独立・中立・公平の原則
- 機動力
- 証言活動
- 民間からの寄付
- 多様な人材が活動
順にご説明します。
独立・中立・公平の原則
国境なき医師団では、援助を行う決定は医療ニーズに基づいてのみ判断します。
政治的、経済的、宗教的利益は関係ありません。
すべての当事者に受け入れてもらうため、どの陣営にもつかず中立な立場を貫き、人種・政治・宗教に関わらず医療を公平に提供します。
機動力
国境なき医師団は、緊急事態が発生してから48時間以内に人材と物資を現地へ届け、調査や援助活動を始めます。
山岳地帯やジャングルなど、車やバイクといった乗り物で行けない場所へ、ロバや馬を使って行くことも。
陸・海・空を問わずあらゆる移動手段を駆使して医療を届けます。
物資は緊急事態に備えて援助物資を世界5か所の物流センターで保管・管理し、直ちに現場へ届けられるように準備しています。
証言活動
国境なき医師団は、1971年フランスで設立されました。
設立したのは医師とジャーナリストです。
医療援助と同時に、現地で何が起きているのか、人道危機を社会に伝える証言活動も使命として明記されています。
人権侵害や暴力行為を国際社会に訴え、医療だけではままならない問題の解決につなげる、危機にさらされている人々の声を伝えることも活動の柱としています。
白根麻衣子さんの記者会見や帰国後の各種インタビューも、この理念に基づいて積極的に行っているのではないかと思われます。
民間からの寄付
国境なき医師団の活動資金は、世界で約97%、日本に限れば99.9%民間の寄付に支えられています。
特定の国などから資金援助を受けず資金の独立性を保つことで、いかなる権力からも影響を受けず、医療を必要とする場所へ援助を届けることができます。
多様な人材が活動
国境なき医師団のスタッフの約半数は非医療従事者です。
医療援助活動は医師だけではできません。
物資の調達、施設の建設、資金・人材の管理など、様々な分野のプロフェッショナルが活動しています。
白根麻衣子さんはその中でもアドミニストレーターとして活動しています。
アドミニストレーターとは、お金と人材を管理する、財務・人事の業務のプロフェッショナルです。
仕事は多岐にわたり、現金管理や支払承認、入金確認から現地スタッフの採用、雇用後の研修、シフト作成や宿泊の手配まで、ありとあらゆる業務があります。
他にも物資の調達から設備管理まで携わる縁の下の力持ちの役割のロジスティシャン、チームマネジメントや安全管理など、プロジェクト全体の指揮を執るプロジェクト・コーディネーターがいます。
医療に関係のない職種でも、これまで培ってきたスキルが役に立つことが大いにあるようです。
まとめ 関心を持って紛争の解決を見守ろう
いかがでしたか?今回は白根麻衣子さんの経歴、国境なき医師団で活動するようになったきっかけなどを調べてみました。
白根麻衣子さんは「いまガザで被害を受けているのは一般市民、つまり子供たちや女性です。弱い立場に置かれた人たちです」
「安全な場所はどこにもありません。ここでは爆撃やミサイルは常に隣り合わせです。無差別な暴力、衝撃的な規模の暴力が目の前で起きています」
そう語っていました。
ガザ地区だけではなく、ウクライナへのロシア軍の侵攻もいまだに解決していません。
これからも「関心を持つ」ことが大切なのかもしれませんね。